Introducing the reasons for creating and the outline!
制作理由とあらすじ
制作にあたって
静岡・三保松原は、古くから白砂青松の地とうたわれ、日本を代表する景勝地として知られてきました。その三保松原を舞台とする能「羽衣」は、能の中でも1,2を争う人気曲です。
能「羽衣」の魅力は、「天女の清らかさ」と「三保の美しさ」にあるといってよいでしょう。羽衣を返したら月にかえってしまうのではないかと疑う白竜に対し、天女が放つ「いや疑ひは人間にあり、天に偽りなきものを」という名台詞は、天女の心の真っ直ぐさ、誇り高さを感じさせます。そして、その清らかな天女が「天と何の違いもない」と讃えた三保の景色―風に揺れる松、夕日に染まる富士山―は、天上の世界を思わせるものとして、人々の心に生き続けてきたのです。
「羽衣」絵本では、そうした天女の清らかさ、三保の美しさを子どもたちに伝えることができるようにと、観世流能楽師の山階彌右衛門先生に監修をいただきながら、制作を進めました。本文は鈴木さやか(静岡県立大学国際関係学部講師)と学生有志が担当、絵は北九州市在住の絵作家・なかおまき氏にご担当いただきました。
あらすじ
ここでは、「羽衣」絵本の簡単なあらすじをスライドショーでご紹介します。テキストで読みたい方は「テキストあらすじ」をクリックください。
テキストあらすじ
むかし、駿河国(いまの静岡県中部)の三保というところに、白竜(はくりょう)という漁師がいました。
ある日、白竜がいつもの通り浜に出かけると、松の枝にきらきらとかがやく衣(ころも)がかかっていました。白竜が衣を手に取りながめていると、遠くから呼びかける声が聞こえてきます。
白竜が振り返ると、松の陰に天女が立っていました。
羽衣がなければ天に帰れない天女は、返してくれるよう必死に頼みますが、白竜はこの羽衣を国の宝にするのだといって、かたくなに返そうとしません。天女はどうしたらよいかわからず、泣き出してしまいました。
天女のことがかわいそうになった白竜は、羽衣は返すが、その代わりに天人の舞を見せてほしい、ともちかけます。舞を舞うためにまずは衣を返してほしい、と答える天女に、白竜は羽衣を返したら舞わずにそのまま天に帰るつもりだろう、と疑います。
すると天女は「うそをつくのは人間だけです。天にうそはありません」ときっぱりと答えたのでした。
この言葉に白竜は自分が恥ずかしくなり、天女に衣を返しました。
羽衣を身にまとうと、天女は舞いながら空の名の由来や、自分の住む月の宮殿の秘密について語りました。話し終えると天女は高く舞い上がり、三保の景色の美しさをたたえ、心を込めて舞い歌うのでした。
いつしか夜となり、月の光と一体となった天女は、この国がいつまでも栄えるようにと、数々の宝石を地上にふらしました。
やがて天女は名残を惜しみながら富士の頂上のあたりへと舞い上り、天のかなたへと消えていきました。
この時天女が舞った舞は、「駿河舞(するがまい)」として、後々まで伝わったということです。