• Facebook
  • Twitter

Synopsis and highlights of Noh related to Shizuoka

静岡ゆかりの能のあらすじとみどころ

 熊 野

あらすじ

 遠江国(いまの静岡県西部)、池田宿(いけだのしゅく)の長・熊野(ゆや)は、京の都で平家の公達である平宗盛(たいらのむねもり)の寵愛を受けていました。故郷の母の容態が思わしくないとの知らせを受けていた熊野は、宗盛に暇を乞いますが、宗盛は「今年の花見だけは熊野とともに行きたい」と帰郷を許そうとしません。そこへ故郷から侍女の朝顔が、母親の手紙を携えて宗盛の許を訪ねてきました。余命の短さを嘆き、熊野への恋しさを切々と訴える母の手紙を読んだ熊野は、必死に帰郷を乞いますが、宗盛はそんな熊野の心弱さをとがめ、ともに清水寺に花見に向かうのでした。 

  都はいまが花盛り。道中、牛車の窓から着飾って花見に出かける老若男女を見た熊野は嘆きを深め、通りすぎる寺社に母の無事を祈ります。やがて清水寺に到着すると、宗盛一行は酒宴をはじめ、熊野は母を案じつつ、優雅に舞を舞い、歌います。そのとき、急ににわか雨が降り、満開の桜を散らしてしまいました。その様を見た熊野は、「いかにせん都の春も惜しけれど慣れし東の花や散るらん」と和歌を詠みます。和歌によって熊野の悲しみを深く思い知った宗盛は帰郷を赦し、熊野は「これぞ観音のご利生(りしょう)」観音さまのお力だと喜び、都を発って故郷に向かうのでした。

みどころ ①「熊野の語りで表される、春爛漫の都の美しさ!」

「熊野」は、「熊野松風に米の飯」と言われ、古くから飽きのこない面白さがあるとされてきました。熊野が語る「老若男女、貴賤都鄙、色めく花衣、袖を連ねて行く末の」橋の上を、花を求めて歩く都の人々の華やかさ、「雲かと見えて八重一重」雲にもみまごうような桜並木の美しさは印象的です。

みどころ ②「熊野の和歌を詠むシーン!」

頑なだった宗盛の心を溶かす、熊野が和歌を詠む終曲部分はやはりこの能一番のみどころです。「都の春も惜しけれど」と、熊野が宗盛の気持ちにも寄り添っているところが良いですね。いまも昔も、歌は人の心を動かすのだなと実感できる場面です。

​(担当:鈴木  さやか)

(イラスト:加藤  花蓮)

 

春 栄

あらすじ

 鎌倉時代、「宇治橋の合戦」という戦いがありました。春栄という少年が捕虜になり、伊豆の三島に住む役人・高橋に預けられました。高橋は春栄をかわいそうに思い、とても可愛がっていましたが、捕虜ゆえに近いうちに殺さなくてはなりません。

 そこへ、春栄の兄・種直が訪ねて来ました。「弟が殺されるなら、私も一緒に死のうと思ってここへ来ました。どうか春栄に会わせてください。」高橋は承知して、春栄を呼びに行きました。 

 ところが、話を聞いた春栄は、「その人は自分の兄ではありません」と言い、会おうとしません。春栄は、兄を自分と一緒に死なせたくない一心で嘘をついたのでした。しかし、兄の懸命な姿を見て、ついに種直を兄だと認めます。こうして再会した2人は手を取り合って泣き、高橋も兄弟愛に感動して涙を流しました。

  そして、高橋は2人に自分の思いを明かしました。「私が春栄殿を可愛く思うのは、亡くなった息子にそっくりだからです。もし春栄殿の命が助かったら、私の養子になって跡を継いでほしい。」
 そこへ、鎌倉の将軍から、「早く春栄を殺せ」という命令が来てしまいます。春栄と種直は、故郷に残してきた母に形見を送り、死ぬ覚悟を決めました。

 高橋が2人を斬ろうとしたそのとき、将軍からまた命令が来ました。内容は、「春栄の命を助ける」というものでした。
 これを聞いて一同は大いに喜び、祝いの宴を開きました。春栄はめでたく高橋の養子となり、種直は祝いの舞を舞って、皆で喜びをかみしめるのでした。

みどころ ①「種直と春栄の兄弟愛!」

「弟が死ぬなら、自分も一緒に」と言う種直と、兄の命を助けようとする春栄。互いを思い合う2人のやりとりは、この物語の大きな見せ場です。

みどころ ②「春栄役の子が可愛い!」

春栄を演じるのは10歳前後の子どもなので、とても可愛らしいです。はきはきと話し、堂々としているその姿は、まさに春栄そのものです。

みどころ ③「悲しい雰囲気から一転、ハッピーエンド!」

「春栄」は人の生死に関わる演目なので、悲しい雰囲気の中で物語が進んでいきます。しかし、最後の最後で命が助かり、皆で祝ってハッピーエンドとなります。観た後に、晴れ晴れとした気持ちになれる演目です。

​(担当:佐野  茜)

(イラスト:加藤  花蓮)

 

夜討曽我

あらすじ

 曾我十郎・五郎の兄弟は、父の敵(かたき)である祐経(すけつね)を討つ機会を、小さい頃からずっと狙っていました。
 2人は、源頼朝が催す狩りに祐経がいると聞き、家臣の団三郎・鬼王兄弟を連れて富士の裾野に向かいます。そこで兄弟はその夜、祐経に夜討(ようち)をかけることを決めました。
 覚悟を決めた曽我兄弟は、故郷の母上に自分たちの形見を届けさせるため、団三郎兄弟に故郷に帰るよう命じましたが、団三郎兄弟は曾我兄弟と共に行くと言って命令に従おうとしません。「仰せのごとくまかり帰れば本意にあらず。また帰らねば御意に背く」、"主君の命に従うべきか”、”主君の命に背いても共にあるべきか”悩んだ末、「どこであれ命を捨てることが大事だ」と思い至り、「いっそのこと今この場で」と2人で刺し違えようとします。

 そこへ十郎がやってきて、「敬ふ者に従ふは、君臣の礼と申すなり。之を聞かずは生々世々。永き世までの勘当(敬っている者に従うのが、儒教が説く君臣の礼というものだ。この君臣の礼に背き、母の形見を届けるという命を聞かないならば、未来永劫そなたたちを勘当するぞ)」と言葉を尽くして2人を説得した結果、団三郎兄弟は涙を流しながら命令に従うことを決めました。そして曾我兄弟は団三郎兄弟に形見と手紙を託し、2組の兄弟はそれぞれの思いを胸に別れます。
 (場面は変わり)祐経を討ちとった五郎が姿の見えない兄・十郎を探し回っていると、頼朝公方の軍勢が五郎を倒そうと攻めてきました。迎え討った五郎はその軍勢と古屋を斬り、力も尽き果てたところへ新たな敵、五郎丸が現れました。2人がむずと組み合い転がったその隙に、大勢の武士たちがおしかぶさって五郎を捕らえ、ついに五郎は頼朝公の前に引き立てられてしまいました。

みどころ ①「兄弟の絆!」

五郎兄弟の夜討への覚悟、母への思い、そして2組の兄弟の涙の別れといった場面は、それぞれの切実な思いが詰まった感動的なシーン!

みどころ ②「アイ狂言!」

〜祐経を討ったシーンはここで語られます!〜
大藤内は祐経が曾我兄弟に斬られた場から慌てて逃げてきて、自分も斬られていないかと狩場のものに尋ねます。さらに兄弟が追ってくると聞いて腰を抜かし、やっとのことで舞台から退場します。
能の間に行われるアイは、面白おかしく状況説明をしてくれるので見やすく、一休みするのにピッタリです!

みどころ ③「最後の立ち合いのシーン!」

五郎が敵の古屋五郎たちと戦うシーンは、人数も多く動きもあり華やかな演出!最終決戦、女性に扮した五郎丸との立ち合いにも注目!

​(担当:鈴木  万記)

(イラスト:加藤  花蓮)

 

​富士山

あらすじ

あらすじ

昔、中国の方士(※1)が日本に渡り、富士山で不死の薬をもらったという言い伝えがありました。ある時、昭明王(※2)の臣下と従者はその不死の薬を探しに伝説の方士の足跡を辿り、富士山の裾野を訪れました。そこで海女たちに出会います。

臣下が不死の薬について尋ねると、なぜか海女は臣下たちに鶯の卵から生まれた女の子の話をし始めました。その女の子はあまりに美しい娘に成長したので帝の皇女となりましたが、最後には鏡と不死の薬を置いて天に帰っていったというのです(※3)。さらに続けて、不死の薬にまつわる富士山の名前の由来(※4)を話し、その富士山のすばらしさを称えました。さらに臣下が富士山の守り神である浅間大菩薩について尋ねると、海女は言葉を濁し「とにかく不死の薬をあげますから、ここで待っていてください」と言い残して、雲の中に消えていきました。

 そのうちに浅間大菩薩に仕える浅間神社の末社(まっしゃ)(※5)の神が現れ、富士山の色々なお話を語ります。臣下たちと海女が話していたのを見ていた神は、「その海女は実は浅間大菩薩で、またの名をかぐや姫というのです」と海女の正体を告げ、最後に舞を舞い、もとの社(やしろ)に帰ります。

 そのまま臣下たちが待っていると、やがて雲が晴れ、金色の光が地上に満ち、かぐや姫と富士の山神である火の御子(みこ)が現れました。すると火の御子は「あなた方の望みどおり不死の薬を与えましょう」と臣下たちに薬を渡すことを許し、かぐや姫は臣下たちに薬を手渡しました。それからかぐや姫はとても美しい舞を舞い、火の御子は力強い舞を披露してくれました。

臣下たちは感動し、「なんてすばらしいのでしょう。火の御子様、かぐや姫様、ありがとうございました」とお礼を伝え、中国へ帰っていき、そしてかぐや姫は山へ、火の御子は空へと消えていきました。

※1神仙の術すなわち方術を行う人。道士。
※2仮想の中国の王。
※3謡曲「富士山」オリジナルのかぐや姫伝説。(鶯(うぐいす)の卵から女の子(かぐや姫)が生まれ、女の子は成長して帝の皇女に迎えられるが、最後には鏡と不死の薬を残して天に帰ってしまう 、という話になっている。)

※4 富士山でその薬を焼いたため、山の名前が不死山となったという話。

※5 本社の浅間神社に附属する小さな社。

みどころ ①「前半と後半での衣装チェンジに注目!」

海女は前半巫女のような衣装で、後半かぐや姫として現れたときは、赤い衣装に金の冠といった豪華な装いに変わります。

みどころ ②「かぐや姫に従う神様がおもしろい!」

くすっと笑えるような話し方や動き方をします。セリフも聞き取りやすいです。

みどころ ③「最大の見どころはかぐや姫と火の御子の舞!」

かぐや姫は優雅な舞を、火の御子は他を圧倒するような力強い舞を舞います。

​(担当:羽場崎  彩香)

(イラスト:加藤  花蓮)

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now